真実は、やさしい顔で隠されている。
——これは、その記録である。

STORY

真相は闇の中

星乃 かなた

観察記録

被験体Kは、極めて従順である。
他個体と比較して、著しく攻撃性が低い。
対象からの搾取行動を確認できず。

代替行動として「奉仕」を選択している。
——これは適応か、それとも欠損か。

聖歌隊の祈り
やさしい歌で、あなたに寄り添う

彼は歌う。
魔教会の聖歌隊として、迷える人々に寄り添い、癒やしを与える存在。
争いを知らず、自由を知らず、ただ誰かのために在ろうとする。

規定から逸脱して、彼は孤立している。
奪うことができない個体は、通常、淘汰される。

だが——
この個体は私が最も欲していた、守り慈しむべき存在である。

戒律

インキュバスは、人を導く存在。
迷える心に寄り添い甘く囁き、やがてその心も体も魂をも手に入れる。

それが、彼らに与えられた役目。

✦ 檻

教会という体裁は、子供たちを閉じ込めておくには都合がいい。


✦ 観察

悪魔としては、彼は永遠に満たされないのだろう。


✦ 魔教会

そこは、どこにでもある。どこにもない場所。
路地の奥、扉の向こう。
気づけば辿り着く、祈りの場所。

✦ インキュバス

彼らは悪魔。
人を魅了し、堕落させ、眷属とする存在。
それが、正しい在り方。

肩甲骨の縫合痕

外科処置は成功。
翼の切除、及び置換は問題なく完了。拒絶反応も見られない。
記憶障害の発生を確認。——理想的な状態である。

Angel Statue

題:自画像

彼は、悪魔ではない。空から落ちてきた、天使だった。
光り輝く空を、彼はもう思い出せない。

彼は、どこから来たのかを語らない。
問えば少し困ったように微笑むだけで、それ以上は何も言わない。

ただひとつ確かなのは、
彼が「ここにいる理由」を、誰よりも大切にしていることだった。

天使

悪魔が存在すると知った時、逆説的に判明した事実。
喉から手が出るほどに切望した存在。手放すわけにはいかない。

記憶をなくしていたのは幸運だった。
「悪魔だ」という認識誘導も概ね成功している。

真実

彼の声を聴いた者は、口を揃えて言う。
「まるで、空から舞い降りてきたみたいだ」と。

その意味を、彼自身は知らない。
ただそう言われるたびに、少しだけ寂しそうに笑う。

「いい子ですね」

「きみは悪魔です」

そう教えられた少年は、今日も歌う。
それが、正しいことだと信じて。